クズ芸人のひとりコロコロチキチキペッパーズのナダル(C)朝日新聞社
クズ芸人のひとりコロコロチキチキペッパーズのナダル(C)朝日新聞社

 最近のお笑い界では「クズ芸人」がちょっとしたブームになりつつある。借金や遅刻癖や女癖の悪さなどの「クズ」な要素を持つ芸人たちが注目を集める機会が増えているのだ。

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 例えば、4月29日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)では「そこまでするか!ラクして楽しく生きるクズ芸人の処世術!」という企画が行われ、ドランクドラゴンの鈴木拓、オズワルドの伊藤俊介、ザ・マミィの酒井貴士、ラランドのニシダなどがクズ芸人として紹介されていた。

 彼らは遅刻を繰り返していたり、借金を重ねていたり、金に汚かったりする。スタジオでは彼らの問題行動の数々が明かされていた。

 4月24日深夜放送の『ゴッドタン』(テレビ東京)では、アンガールズの田中卓志が、クズ芸人たちをその特徴から「金」「性悪」「サイコ」の3つに分類していた。

「金」とは多額の借金を抱えていることで、岡野陽一や空気階段の鈴木もぐらが当てはまる。「性悪」とは性格が悪いことで、鬼越トマホーク、とろサーモンの久保田かずのぶ、TKOの木下隆行が当てはまる。「サイコ」とは常人の理解を超えたキャラクターを持っていることで、コロコロチキチキペッパーズのナダルや安田大サーカスのクロちゃんが当てはまる。

 また、2019年9月12日に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日)で行われた「私生活芸人っぽい芸人」という企画でも、いわゆるクズ芸人の定義に近い「私生活芸人っぽい芸人」が取り上げられていた。この企画に出演していたのは、千鳥の大悟、納言の薄幸、見取り図の盛山晋太郎、岡野陽一、鈴木もぐらというメンバー。彼らは、タバコ、深酒、ギャンブル、借金などの特徴を持っていて、昔ながらの芸人らしさを備えている。

 ギャンブル中毒も、多額の借金を抱えているのも、遅刻癖があるのも、一般社会では許されることではない。本人が信用を失うだけでなく、周囲に迷惑をかけてしまうこともある。そんなクズ芸人たちが、なぜお笑いの世界では面白おかしく取り上げられ、注目を集めているのか。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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