いま、ひときわ異彩を放っているYouTubeチャンネルがあります。「お料理の中学生」というチャンネルで、父子家庭の女子高生が顔出しをせずに料理を作る動画を投稿しています。中でも「パパはヒヤヒヤのトンカツを食べればいい」という動画は、公開10日で500万回再生を超えており、YouTubeでおすすめ動画として出てくる頻度も高いです。

 サムネイルの文字の枠の色を背景の色に被らないように変えたり、動画内でのテロップの位置や文量、カメラワークや切り替えのテンポの良さや音質などの様々な要素をもって、素人離れしています。「料理+ストーリー」という切り口のチャンネルは他にもあり、「父と子つなぐおべんとう」というシングルファザーのチャンネルも人気です。私はこれらのジャンルを「ストーリーつき料理チャンネル」と呼びますが、今のYouTubeにおいて、とても興味深いジャンルだと思っています。

 これらのチャンネルに共通する傾向は、「ダウンマウンティング」(見下される要素)を上手に取り入れていることです。世間で言われる「マウンティング」は、上から目線や相手より上のポジションを取ろうとする言動を指します。一方「ダウンマウンティング」はその逆で、わざと相手よりも弱く、下のポジションを取りに行くことです。YouTubeにおいては、ダウンマウンティングは非常に有効です。人間の本能には、「自分より下のポジションの人を見下したい」「下を見て安心したい」「下を見ると落ち着く」という深層心理があります。その欲求を満たすために、YouTuberの中には、「貧乏」「低学歴」「低収入」などのダウンマウンティング要素を巧みに取り入れる方々がいます。多くの一般的な人は、自分をかっこよくみせたいと思うので、自分をかっこよく(もしくは可愛く)みせるためのチャンネルや動画を作りがちです。しかし、プロや再生されるYouTuberは、あえてダサい服装や髪型や部屋にしたり、頭やスタイルの悪さなどのマイナス要素を押し出してキャラづけします。かっこよくみせようとすると再生されないのがわかっているからです。

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