長野高校の宮本隆校長をたずねた。

「私服について細かな規定はありません。今ではすっかり定着しています。新入生に向けて通学服の細かな話はしていないです。制服を復活させる動きも生徒、教師、保護者からは出てきませんね」

 長野高校は教育理念として「至誠一貫 質実剛健 和衷協同」を掲げており、自主自律の精神が受け継がれてきた。

「保護者から服装が華美になってお金がかかるからなんとかしてほしいという意見も出ません。1年生のうちは『なんちゃって制服』を着ている生徒が見られましたが、年々、減っています。生徒は自律し、自分で考えて良識を守り通学服を選んでいるようです」
 
◆長野県松本深志高校

 前身は1876年設立の旧制松本中学である。今井義明校長はこう話す。

「学問以外は自分たちでしっかり決めていく。こうしたなかで制服の自由が続いていると思います。校則自体がないので、制服を制定しようという動きは、これまでありませんでした。松本市内の公立高校はすべて私服なので、すっかり定着しています」

 県内では、1970年前後の高校闘争の影響を受けて制服自由化に踏み切った学校が多い。だが、松本深志は初めから制服は定められていなかった。

「新制高校になったとき、制服は重要な問題ではなかったようで、通学服は生徒に委ねられました。結局、制服は作られず今日にいたります。服装に関する指導をまったく行っていません。学校は自由と自治を重んじていることもあって、生徒にまかせています」

 今井校長も松本深志高校OBで、1970年代に通っていた。

「自分の高校時代に比べるとこぎれいになりました。制服のほうが安上がりと言われますが、服装そのものが安くなって気軽に買えるようになり、私服だからといってそれほどお金はかからないように思います」

(教育ジャーナリスト・小林哲夫