写真はイメージ(Gettyimages)
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『独学大全』は、総ページ数788ページ、税込み3千円超という異色のビジネス書。17万部を突破
『独学大全』は、総ページ数788ページ、税込み3千円超という異色のビジネス書。17万部を突破

 独学しようと志して、挫折した経験がある人は少なくないだろう。自主学習のための技法を紹介した著書『独学大全』(ダイヤモンド社)が17万部を突破したブロガー・読書猿さんに、英語の自主学習を成功させる秘訣を聞いた。現在発売中の『AERA English 2021 Spring & Summer』(朝日新聞出版)からお届けする。

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■人間は挫折する生き物 まずそれを認めること

――読書猿さんは、幼い頃から読書が苦手で、克服するためにあらゆる分野の独学を続けられたそうですが、英語学習者の多くが途中で挫折してしまう理由とは何でしょうか?

 読書猿さん:日本で普通に暮らしながら、英語力をある程度身につけるためには、英語に集中的に触れる時間を人工的に作り出し、長期間維持する必要があります。挫折というよりも「続かない」「途中でやめてしまう」最大の原因は、「意志や気持ちの力に頼る」からだと思います。

 人は体温を保つ機能は持っていても、意志を保つ能力はもとから持っていない。英語学習を始めるときにどれだけ強い気持ち、高い意識を持っていても、何日か経てば、そうした高揚した気分は消えてしまいます。働いている方であれば、「やるぞ」と思ったらその時はすべてを懸けて勉強に集中しますが、感情が落ち着いてくると、やがて「今日は眠たい」「仕事が忙しい」「電話がかかってきた」などと、意識が散らばっていく。それはそもそも人間の仕様なのだと思います。

 生物学的には人が「いまここ」の状況に対応するのは当然です。でないとアフリカのサバンナにいたぼくらの遠い祖先は、過酷な生存競争を生き残れなかったので。外敵から身を守ったり、未知の危険に気づいたりできるように、もともと気が散るようになっている。同じことを考え続ける能力は備わっていないのです。

 こうしたことを知っておくだけでも、勉強は楽になるでしょう。失敗しても自尊心を痛めつけずに済みます。「自分だけ英語が苦手で、他の人はもっとうまくやっている」と嘆きがちですが、今英語ができる人たちも何度も挫折した人たちなのです。

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意志や気分に左右されない仕組みをつくる