演説が終わると高齢者から若者まで幅広い層がツーショット写真やグータッチを求めて行列を作った。自民党本部の幹部はこう呆れ顔だ。

「河村氏は偽造署名問題などスキャンダルだらけだった。勝てるわけないと思っていたがこの強さはなんだ? 横井氏が自民党を離党して出馬したのが失敗だった。あれじゃ、自民党本部から表だって幹部は応援できないし、資金を投じられない。共産党と組んでいるのだから、そこにカネを入れるわけにはいかないでしょう。横井氏は善戦はしたが共産党と組んだ結果が、これ。負けちゃ、終わりだ。河村氏の選挙の強さは信じがたいよ」

 河村氏は勝因をこう記者に語った。

「河村か反河村かという対立構図を向こうが作ってくれたことで
ますますファイトがわいた。負けてたまるかと思った」

 今年の解散総選挙の出馬も噂されていた河村氏に鞍替えについても尋ねた。

「今回の市長選の結果を見ても、こんなにほど叩かれても勝ったというのは、有権者に見放されておらん証明だわな。これからも名古屋市長として頑張るし、いずれは総理を目指すと思う気持ちはある。次期衆院選は悩ましいが、勝つ自信はもちろんあるよ。アメリカのバイデンさん、78歳で大統領だわ。ワシは72歳、まだまだ戦える」

(今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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