そもそもブルーライトは、青空を見上げればわかるように、太陽光にも含まれるごく一般的な光だ。

「太陽光はとても強烈で、紫外線を大量に浴びると目の病気、例えば、翼状片、白内障、黄斑変性といった疾患を引き起こすことがあります。ですが、デジタルデバイスの画面から出るブルーライトは太陽光とは比較にならないほど微量で、健康障害が出るというのは一般的には考えにくい。それをカットしなければならないという論理は成り立たない、ということです」

■ブルーライトを避けることの「危険性」

(2)<小児にとって太陽光は、心身の発達に好影響を与えるものです。なかでも十分な太陽光を浴びない場合、小児の近視進行のリスクが高まります。ブルーライトカット眼鏡の装用は、ブルーライトの曝露自体よりも有害である可能性が否定できません>

 太陽光は子どもの成長には不可欠なもの。なかでも昼間、十分に明るい場所で過ごすことが重要だと言われてきた。ただ、太陽光の何が有効なのか、科学的には結論は出ていないという。

「もしかすると、太陽光の一部のブルーの光が大切かもしれない。ということは、それをカットしてもいいのか、という話になります。ブルーライト曝露の危険性はほとんどないわけですから、それを避ける問題のほうが多い可能性を否定できません」

 中国や台湾では、教育現場に十分な明るさの太陽光を取り入れる政策を国を挙げて行っており、それによって子どもの近視が抑えられたデータが得られているという。

(3)<最新の米国一流科学誌に掲載されたランダム化比較試験では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されています>

「一流科学誌とは『AMERICAN JOURNAL OF OPHTHALMOLOGY』で、眼科医に信頼されている雑誌です。また、米国眼科アカデミーからも同様のコメントが示されており、この団体はもっとも信頼性が高いとも言える組織です」

 デジタル機器の画面を長時間見つめていると、まばたきの回数が減少し、目が乾くことから眼精疲労を感じることもある。ただし、こういったケースはブルーライトとは「別の問題」という。

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大人への影響は?