しかし、これらは苦しんでいる子の氷山の一角です。国立成育医療研究センターの調査によれば、小学校4年生から高校3年生の715人に聞いたところ、4人に1人の子どもが「死にたい」と悩んでいたことがわかりました。

 コロナ禍で子どもたちは精神的な不安にさらされ、一斉休校などで政府にも翻弄されてきました。声に出さずとも、苦しんでいる子は多いはずです。そこで、目の前の子が苦しんでいた場合には「TALKの原則」を守った対応をお願いいたします。「TALKの原則」とは、以下の原則です。

(1)Tell:言葉に出して心配していることを伝える。

(2)Ask:自殺についてはっきりと尋ねる。

(3)Listen:相手の訴えに傾聴する。

(4)Keep safe:安全を確保する。

 精神科医・松本俊彦さんによればポイントは2つ。「自殺についてはっきりと尋ねる(Ask)」ことは悪いことではないこと。もう1つは「相手の訴えに傾聴する(Listen)」というのは「バカなこといわないの」「冗談はやめてよ」と相手の話を遮ったり、「死んではいけない」「死んだら残されたら人はどうするのだ」などといった正論をぶつけないこと。

 TALKの原則は「非専門家向け」の対応です。ほとんどの人が精神医療関係者ではないので、まずはこのTALKの原則をもとにして緊急対応をし、専門家につなげるのがSOSの基本手順です。連休明けや夏休み明けなど、子どもが揺れ動く時期はとくに注意をしていただきたいと思います。

 昨年、自殺で亡くなった子は499人です。1日に1人以上の子が亡くなっていますが、そのほとんどは報道されていません。報道される自殺は特別な例だとは思わず、目の前にいる子どもに心を砕いていただければと思います。(文/石井志昂)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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