しかし、これまで「いじめまでには至っていないなかった」という学校の対応にはネット上でも批判が集まっていました。まるで死者にムチを打つような学校対応なのですが、20年以上、不登校やいじめの取材してきた私は、何度も同様の対応を見てきました。

 とくに印象的なのが、2007年に起きた北本いじめ自殺裁判です。2006年、ある女子中学生(当時12歳)が自殺をし、両親はその原因はいじめだったと訴訟を起こした裁判でした。1審判決では両親の訴えは棄却。2審では同級生が「いじめがなかったという判決を聞いてびっくりしました。彼女はいじめられていました」と泣きながら証言台で訴えました。しかし判決では「いじめはなかった」と結論づけられています。

 裁判では終始、学校側は「いじめはなかった」と主張。遺族への反省や謝罪の言葉もなく、両親の家庭環境に問題があるかのような証言を重ねました。さらに、いじめに関する校内アンケ―ト結果などの証拠品も破棄。組織ぐるみで責任を回避するかのような行為に両親は心を痛めていました。

 こうした遺族が苦しむ裁判を、私は何度も見てきました。学校や教育行政は子どもの自殺から学んで考えを改めていただきたいと思います。

 そして保護者の方にも、お願いがあります。学校も、先生も、同級生も人です。人間ですから、善い面も悪い面も併せ持っています。「学校でちょっとでもおかしなことを感じたら言ってね。かならず助けになるから」と、お子さんに伝えてほしいのです。学校も組織なので、それを相手に一個人や家庭が立ち向かうにはハードルが高すぎます。教員も市教委の人間もその組織の一員です。過去のいじめ裁判での学校側の対応を見てきた経験から、組織防衛のために学校が責任回避する可能性は否めません。

 自分の子どもや周囲の子どもの安全を優先して対応してもらいたいと思うのです。では、どうすればよいのか。具体的には下記の原則に従った対応をお願いいたします。

■SOSに気がついたときの原則

 最後に、子どもの異変や命の危険を感じた際、周囲はどうすればよいのかをお伝えしたいと思います。というのも、子どもの自殺が増えています。昨年の小中学生の自殺者数は499人(警察庁まとめ)。小中高生の自殺者数の統計がある1980年以降、最多に上りました。

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TALKの原則を守って