「投機」が着眼しているのはプライス、価格です。対象が株式であろうが、為替であろうが、大豆であろうが、安い価格で買って、高い価格で売ることを目的するのが「投機」。

 一方、「投資」とは価値と比べて価格が安ければ「買い」であり、価値と比べて価格が高ければ「売り」になります。つまり、投資とは価値に主眼を置いて、それに対する価格によって行動が変わるのです。

また、合理的な市場のその時その時において「正しい」価格は一つしかありません。売り手と買い手が出合ったところです。

 ただ、その時その時に一つの「正しい」価値はありません。短期的な価値、長期的な価値、経済的な価値、社会的な価値、環境的な価値など。つまり多様な価値が自由に参加している市場こそ、健全な市場なのです。

 そういう意味で現在の日本株式市場で日本銀行のETF(上場投資信託)買いが大きな存在感を示している状態は健全な傾向と言えるでしょうか。日本銀行が株式を購入する際に「価値」の判断あるとは思えません。
(渋沢健)

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渋沢健

渋沢健

渋沢健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。

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