※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 新型コロナウイルスという未知の脅威に対して、あらゆる知見が新しい医学論文になりえます。しかし、論文になっていれば本当に信用していいのでしょうか? 近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が注意を呼びかけます。

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 COVID-19に関して連日多くの論文が発表されています。加えて最近では、新型コロナウイルスに対するワクチンの論文も増えました。このコロナ禍においては、一般の方も論文を目にする機会があると思います。

 私たち専門家は論文を読むトレーニングを受けており内容を評価できますが、一般の人が論文に触れるときはいくつか注意が必要です。SNSで一般の人が論文を紹介しているケースがあるからです。今回は、論文の一般的な掲載方法と、気をつけるべき「プレプリント」と「ハゲタカジャーナル」について解説したいと思います。

 まず、どのように論文が専門誌に掲載されるのか簡単に説明しましょう。

 一般的な雑誌と同じように、専門誌には編集長(Chief Editorもしくはeditor in chief)がいます。ほとんどの場合、編集長はその分野で高名な研究者がつとめ、研究活動の傍らに編集業務を行います。編集といっても、文章を校正するわけではなく、専門誌に送られてくる論文が掲載に値するものかどうか最終判断することが一番の役目です。

 投稿された論文はまず編集長(もしくは他の編集者)が目を通し、「審査するのにふさわしいか」をチェックします。ここでレベルが低いと判断された論文は掲載不可となり、却下(reject)となります。編集長が行う第1段階の審査に通らないことを私たち研究者はeditor kickと呼びます。

 編集長のもとには編集を補佐する各分野の専門家が何人かいます。この専門家たちが次に論文を詳しく評価する人を2~3人決め依頼します。この論文の評価をする人たちのことを査読者(レビューアー)と言います。レビューアーはその分野の専門家で現役の研究者のことが多く、2週間から1カ月かけて投稿された論文の中身を検証し問題点を指摘します。編集長もしくは担当編集者が2~3人のレビューアーのコメントを集めて、最終的に論文が掲載にふさわしいかどうかを判断します。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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