つまり、裁判にかかる費用を考えた場合、まったく現実的な話ではないということだ。

 注意した結果、相手とケンカになってしまったら、暴行罪や傷害罪に問われるかもしれない。さらに、そのケンカの様子を撮影した動画がメディアやネット上に拡散され、店に客がまったく来なくなるなどの大損害を負った場合、店側から賠償を請求される可能性も否定できないという。

 わざわざ注意して損をするなら、結局、割り込みであろうが「代表待ち」であろうが、「被害者」はこらえるしかないのか。

「道義的な問題ですから、注意をすること自体は良いと思います。私は、店が『代表待ち禁止』の注意書きを出している場合、その当事者に声をかけて並び直してもらっています。ただ、逆に注意書きがない場合、店がルールを設けていないということなので、なかなか注意はしづらく泣き寝入りせざるを得ないように思います。対策は店側にゆだねる部分が多いと考えますので、もっと多くのラーメン店が『代表待ち禁止』の姿勢を打ち出して、列に入り込みづらい雰囲気が形成されることを期待しています」(櫻井弁護士)

 グッとがまんが必要だ……。

(AERAdot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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