「米国ローカル局などではもっと露骨です。特にラジオ局などは、対戦チームを徹底的にこき下ろす。球団、選手、ファンも理解していて、ある意味楽しんでいる部分もある。ただし全国放送ではそういうことはない。中立の立場で各スポーツを正確に伝えています」(スポーツ新聞MLB担当)

 MLBをはじめ米国スポーツでは、全国放送などはリーグが一括、ローカル局は各球団が放映権料も含めて管理している場合がほとんど。NPBなどでも近年、リーグによる放映権や肖像権の一括管理する流れも進んできた。しかし長年の慣習などもあり、いまだに極端な“肩入れ中継”は後を絶たない。

「昨年の日本シリーズ、日本テレビ系列の中継が大問題になったのも根本はそこ。NPBの頂点を決める最高峰の試合で、あまりに巨人に寄り過ぎた。極端な話、シーズン中ならあそこまで炎上しなかったのではないでしょうか」(在京スポーツ新聞デスク)

 日本シリーズ第1戦、ショートゴロ併殺打に倒れた丸佳浩(巨人)が、ファースト中村晃(ソフトバンク)の足を蹴ってしまうアクシデントが起こった。大ケガにもつながりかねないプレーだったが、中継した日テレアナはその部分を完全にスルー。その後も巨人寄りの実況を続けたため、ネット上などから火がつき大問題になった。

「場内も騒然としていたのだから、実況として説明義務があった。日本シリーズはNPB管轄で巨人主催試合ではない。全国中継局も限定される中で、あまりにお粗末すぎる。日テレが巨人と同じグループ企業とはいえ、これまでも目に余る実況が多過ぎた歴史があった。その集大成のような大失態だった」(在京スポーツ新聞デスク)

「野球中継はこうなんだ、と視聴者に思われている。スポンサーも企業イメージに直結するので手を挙げにくくなる。野球の視聴率が取りにくくなっている中、芸能人起用や多少のバラエティ化は仕方ない。しかしあまりに露骨なものは逆効果」(大手広告代理店関係者)

 映像(=画)が娯楽として欠かせなくなった。画とともに、背景にある実況や音楽が重要視されるのは仕方ない。編集できるものと異なり、実況中継は一発勝負の世界。そこでの技量によって印象は大きく変わってしまう。

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プロ野球中継以外は名実況は多い?