原発にまつわる話をすると原発推進派と反対派みたいにすぐに分かれたがる。そこも問題。今回の処理水海洋放出は、原発推進、反原発、関係ない話なんですよ。東京電力福島第一原発が爆発して、その処理水をどうするかっていう話だから、反原発だからって「何もしません、貯めておけば……」という答えはないでしょ? 

 ぶっ壊れた原発の処理をどうするか、そこから出た処理水をどうするかの問題なんでしょ? 新しい原発をこれからつくるという話だったら反原発の人たちが反対してもそれはそれでしょう。さらに、その処理水は科学的根拠から海洋放出しても大丈夫となっているし、初めて流すことではなく、原発を稼働させれば必ずトリチウム水は出るもの。世界の原発でも海洋に流していることなんですよ。

 科学的に何の問題もない水であることを僕は何度も話していますが、メディアではなかなか取り上げない。今、問題なのは風評被害なんですよ。今こそ風評をなくすためにどうするか? そのためには、まず処理水とはどういうものなのか何度も何度も報道すべきだと思う。

 地上波のゴールデンのテレビ番組できちんと処理水の話をしたらいい思う。風評をなくすというのが課題なんだから、風評をなくすためにひとつひとつメディアで報じていくことが大事だと思うんですよね。

 知らないがために間違ったことを言う人がいて、「安全な水なら東京湾に流せよ」という意見も出ますが、ロンドン条約で禁止されているんですよ。ロンドン条約では、船から汚れたもの全般を流すのが禁止されていて、原発から出た処理水を運んだりして他の場所で流すのはダメ。そういうことも知らなかったりするじゃないですか? このままだと喧々諤々、また新たな風評が拡がっていくだけだと思う。

 海洋放出が決まってから、また処理水が話題になり、色々な意見がまた出てきて、ふりだしに戻ったみたいな感じですよね。それはどうしてかというと、やはり処理水のことを知らないから。でも、処理水のことを知りたいですか? と言えば、そーでもないですよね(笑)。僕は福島が元々好きで、原発や原発事故のことにも興味があったからある程度知っているけど、興味がない人にとっては知ろうとすら思わないですよね。

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処理水の風評を抑えることをみんなで考えよう