■作品に反映される日本女性の生きづらさ

 日本の女性作家の活躍に、都甲さんは、「いろんな要素が重なっていて、はっきりとした理由はわからない」としつつ、「日本女性の生きづらさ」について言及した。世界経済フォーラムが19年末に公表した「ジェンダーギャップ指数」で、日本は153カ国中121位。先進国のなかでも女性の地位が驚くほど低い。

「作品の良しあしに年齢や性別は関係ない、と言われることも多いですが、作家自身が直面する生きづらさという点では、男女で大きく異なるでしょう。作品には作家のパーソナリティーが少なからず反映されているはず。現代の日本で女性として生き、感じていることが作品に反映され、世界中のマイノリティーの方たちの共感を得ているのでは」

 そしてこう締めくくった。

「日本の文学史を見てみると、代表的な作家の9割が男性です。ところが、近年海外で権威のある文学賞には女性作家ばかりが名を連ねる。革命的なことだと思います」

◆都甲幸治(とこう・こうじ)
翻訳家、早稲田大学文学学術院教授。東京大学大学院修了。著書に『21世紀の世界文学30冊を読む』(新潮社)、訳書にジュノ・ディアス『わたしの島をさがして』(汐文社)、チャールズ・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文庫)、ジャクリーン・ウッドソン『みんなとちがうきみだけど』(汐文社)などがある。

(文/濱田ももこ)

※『AERA English 2021 Spring & Summer』より