「ミスマッチ」の声も出る大差になったのは、パナマのせいではなく、なでしこジャパンのデキが、シリーズ前の予想を上回ったからだ。鹿児島合宿ではオフ明けの重さも感じたが、トレーニングを積み、身体が絞れていた。また、海外組も長い旅程や時差をハンデとしないプレーを見せた。

 試合の2日前に合流した長谷川唯(ACミラン)もそのひとり。イタリアで戦いながら、球際の強さを向上させるとともに、パスワークを強みとするなでしこジャパンの特長を考え、自らをそこにフィットさせた。立ち上がりから、左サイドを主戦場に躍動。34分には、菅澤のシュートのこぼれ球に反応し、コースを消そうとするGKジェニス・ベイリーと3人のDFを手玉にとるようなループシュートを、ゴール右隅に放り込む。前半終了間際の菅澤、籾木結花(OLレインFC)のゴールも、パナマのDFを引き付ける仕掛けからパスを通した、長谷川の動きが光った。

 56分にも、左サイドから中央へドリブルしながらタメを作り、自分と入れ替わるように左のスペースへ侵入した岩渕真奈(アストン・ヴィラ)へボールを預けて、菅澤のハットトリックを演出。60分からは、4-1-4-1に組み替えたシステムの中で、林穂之香(AIKフットボール)と並んでトップ下へ。90分フル出場で、チーム最多のシュート6本を放った。

 ハットトリックを達成した菅澤、岩渕、籾木、そして長谷川のカルテットは、2年前の女子W杯でもオランダをKO寸前に追い込んでいた。主力選手が普段の体調で試合に臨めば、これだけの破壊力がある。その証左になったし、フランス大会経験者以外も、それぞれ成長を感じさせた。

 この2連戦では、攻撃の強化へ、大きく針を振ることができた。海外組やディフェンスラインも交えて、崩しのパターンを共有できた。大量得点を体感して、自信がついた選手もいるだろう。

「トライアンドエラーはありましたが、チームとしても、個々の選手も、攻撃の多彩さを発揮してくれたんじゃないかなと思います。これまでは、もっと強いチームとやることを選択してきましたけれども、攻撃の部分でたくさんの形や課題が出た、非常に価値のあるゲームだったと思います」(高倉監督)

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五輪での躍進はあるのか?