通りすがりの一般人の顔を自由に出せなくなった。昔は「テレビに出たいでしょ」と思っていたかもしれないが、今はそうじゃない。

 他にもたくさんある。人を落とし穴に落とす企画もなかなか見られなくなった。落とし穴って実は結構危険なんですよね。走って来た人を落とし穴に落とそうとすると、前後含めて合計10メートルくらいの穴を掘らないといけない。ショベルカーで穴を掘るってめちゃくちゃお金がかかるんです。なので、意外に最近の地上波の番組では見られなくなってきた。

 大食いはあるけど、早食いはない。なぜなら早食いすると喉に食べ物を詰まらせて事故が起きる可能性があるから。ドッキリで言うとお色気ドッキリもなくなってきたし、90年代は、営業に行くとお客が全員ヤクザだったなんてドッキリもあったが今はコンプライアンスNG。

 できないこと、やらないこと、やれないことが本当に多くなったなと改めて思う。その中でなんとかもがきながら狭い部分をより深く掘り起こして番組を作る今のテレビマンのパワーも凄いなと思う。

 テレビがおもしろいと思うことを放送出来るパワーは昔より本当に減ったと思う。ユーチューブはできている人も多いかもだが、そのターゲットは絶対にそっちに行くと思う。

 今のテレビで失ったものをあらためて確認しながらも、せめてネットは変わらないでほしいと思いながらも、変わっていくんだよな。そしてまた新しいものが出てくる……。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。主演:今田耕司×作・演出:鈴木おさむのタッグで送る舞台シリーズ第7弾『てれびのおばけ』が4月18日(日)まで 下北沢・本多劇場で上演。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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