宮崎から東京に上京した坂口は、武蔵野大学に入学した。授業が終わると、川崎のビーチスポーツクラブアカデミー(KBSC)へ通い、トップツアー上位進出を目指し始めた。

 この頃から「期待の若手」としてメディアに取り上げられるようになった。待望の女子ビーチバレー界のホープはたちまち話題に。以降、メディアは坂口にいろいろなキャッチコピーをつけてきた。ビーチの「宝石」、ビーチの「エンジェル」、そして最も多く謳われたのは「新・ビーチの妖精」だろう。「新」には、「元祖・ビーチの妖精」と呼ばれた浅尾美和さんの後継者という意味が込められているようだが、当の本人は全力で否定する。

「言われることは本当にありがたいことですが、私は妖精にはほど遠いです(笑)。浅尾さんのプレーを生で見たことはないですが、映像で観させていただいて、喜び方が可愛くて、本当に『妖精』そのものだと思いました。かつてスタンドが満席だったことにもすごく納得しました」

 否定する理由はちゃんとある。

「私、よく『ビーチのゴリラ』って言われるんです(笑)。ガッツポーズなんてまさにそう。ある大会の写真を見て、私ってこんな喜び方をしてるんだなって自分でも衝撃を受けました(笑)。だから、なんで私が『妖精』と呼ばれるのか、まったくわかりません(笑)。パートナーの(村上)礼華のほうが、天使とか妖精っぽい可憐な動き方をしています」

 1歳下の村上とは2019年にペアを結成した。1年目の「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2019」で6戦出場して3勝、ファイナル大会では強豪チームを倒し、初優勝を果たした。名実ともに『若き女王』というキャッチコピーを手にした。

「ペアを組んだ当初は、2人で泣いてばっかりで、チーム状態もあまりよくなくて(笑)、その時はまさか1年目にファイナルで優勝するとは思っていませんでした。むきになって夜遅くまで練習して逃げずに向き合ってきたのも、チームが成長していった要因だと思います」

次のページ
東京五輪の切符を掴めるか…