小笠原と今井よりも先にブレークの兆しが見られるのが3年目の高橋優貴(巨人)だ。ルーキーイヤーにいきなり5勝をマークしたが、昨年はわずか1勝と低迷。今年も二軍スタートが濃厚だったが、ギリギリで開幕ローテーションの6人目に滑り込むと、2試合連続で7回を自責点「0」の見事な投球を見せて連勝スタートを飾った。

 ストレートのスピードは140キロ台中盤程度で好調時と比べると少し物足りないものの、内角を思い切って突くコントロールが安定してきたことで投球の幅が広がった印象を受ける。スライダー、スクリューという対になる変化球も昨年と比べてしっかり低めに集めることができている。チームは主力選手の新型コロナウイルス感染などもあって開幕から苦しい戦いが続いているが、その中でも高橋の台頭というのは数少ない明るい材料と言えるだろう。

 ここまで紹介した3人は全員がドラフト1位でプロ入りした選手だが、下位指名からのブレーク候補も存在している。それが2014年ドラフト4位で入団し、今年7年目となる笠谷俊介(ソフトバンク)だ。分厚い選手層のソフトバンクの中で3年目には早くも一軍初登板を果たしたものの、なかなか結果を残せずに低迷。昨年ようやくリリーフでプロ初勝利をマークすると、シーズン終盤は先発も任されて4勝を挙げる活躍を見せた。

 今年は初めて開幕ローテーション入りを果たし、シーズン初登板となった3月30日のオリックス戦では6回1失点の好投で見事に勝利投手となっている。高校時代はまとまりのあるサウスポーという印象だったが、ストレートはコンスタントに140キロ台後半をマークするまでにスピードアップしており、好調時の投球はチームの先輩である杉内俊哉を彷彿とさせるものがある。豊富な投手陣を誇るチームでも左の先発投手は多くないだけに、7年目の大ブレークも期待できそうだ。

 最多勝5回、沢村賞3回に輝き、“平成の大エース”と言われた斎藤雅樹(元巨人)も大ブレークしたのはプロ入り7年目であり、それ以前は殻を破れない期待の若手だった。今回紹介した4人も能力の高さは間違いないだけに、上手くきっかけをつかんで一気にチームのエース格へと成長してくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員