それなのにこの大会の参加者数よりはるかに少ない五輪選手団の人数のため、東京五輪に参加しないというのはあまり説得力がない。

 今になって北朝鮮が東京五輪「不参加」を宣言した理由は何か。

 まずは北朝鮮の文政権に対する圧迫だ。

「北朝鮮の東京五輪不参加決定を公開した5日は、ソウル、釜山両市長補欠選の2日前だ。選挙に影響を及ぼそうという意図もある」(政府関係者)

 2019年2月に行われたベトナム・ハノイでの米朝首脳会談後、北朝鮮は文大統領と青瓦台に対して露骨に反感を表わしたという。

「その後、北朝鮮はずっと文政権を無視してきた。韓国が米朝対話の仲裁者の役割を果たす力量がないと判断したようだ」(同前)

 米国の対北朝鮮敵視政策の撤回がない以上、北朝鮮は韓国や米朝対話には乗り出さないという観測もある。

 韓国の2大市長選の敗北は任期残り1年余りの文大統領にとっては大きな打撃となった。それだけに、来春までの人気回復は至上最大の命題なのだ。文政権は金正恩委員長を説得し、東京五輪での南北統一チーム参加を実現しするという逆転サヨナラ打を打てるのだろうか。

(在ソウル ジャーナリスト・朴承珉)

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朴承珉

朴承珉

朴承珉(パクスンミン)。ソウル在住ジャーナリスト。時事通信ソウル支局記者を経て、「文藝春秋」「週刊文春」のソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ。平壌や開城工業団地、板門店、金剛山など8回以上北朝鮮入りして取材。黄長燁・元朝鮮労働党国際担当書記の米議会での証言に同行取材(03年)。金正男氏の暗殺された直後(17年2月)、2回マカオ入りして取材。日韓メディアに多数寄稿している。

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