疑問4 長時間イヤホンを使っていると難聴になる?

 イヤホンで携帯音楽プレーヤーから音楽などを聴取する場合、適度な音量で1日1時間を限度にすることができれば、おおむね難聴リスクを避けることができるでしょう。

 耳にとって適度で安全な音量とは、イヤホンを装着して音楽を聴いていても、外側から呼びかけられたときに、自分の声が大きくならずに応じられる程度の音量です。応じる声が大きくなって聞き返すほどでは音量が大きすぎると覚えておきましょう。

 日常生活における難聴リスクのある騒音といえば、走行中の電車内や飛行中の飛行機内のエンジン音なども騒音レベルで測定するとそれなりに高いといえます。走行中の電車内は約80dB、飛行中の飛行機内は70~80dBとされています。WHOの基準で、難聴リスクを避けるには、80dBの騒音は1週間に40時間までとされています。

 そのため、通勤や通学でそうした乗り物を連日、長時間利用するような場合、難聴リスクを避けるためには耳栓の利用も有効です。欧米では、難聴予防の観点で飛行機など騒音環境での耳栓利用も一般的になってきています。

疑問5 一対一の会話は聞き取れるのに数人の会話だと聞きにくいのはなぜ?

 私たちが通常、会話する場合、相手の一言一句すべてのことばを聞き取って理解しているわけではありません。多少聞き取れない部分があっても、全体の会話のなかでことばを予測しながら会話をしています。

 難聴の人の場合、聞きもらしてしまう音が多いため、ことばとして理解しにくくなります。それでも、相手の口の動きが見える一対一の会話では、ゆっくり、はっきりと話してもらうことで、聞き取れない音があっても予測しながらことばとして理解ができます。

 しかし、複数人の会話では、それぞれの人の声の音量の違いや周囲の雑音の影響などで音を聞き取れない場面が多く、発音される向きによって口の動きも見えにくいため、ことばの予想もしにくく、会話が聞き取りにくくなります。

 さらに、相手がマスクをしている場合は、マスクで相手の口の動きが見えず、音もこもってことばがぼやっとして聞き取りづらくなります。とくに高音域のサ行の摩擦音の聞こえが弱くなり、聞き取りがより困難になります。

【監修】
新田清一(しんでん・せいいち)医師
済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科主任診療科長/聴覚センター長
鈴木大介(すずき・だいすけ)さん
済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科言語聴覚士

(文/石川美香子)
※『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』から