※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 マスクの着用により、「声が聞き取りにくい」と悩む人が増えています。現在発売中の『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』(朝日新聞出版)では、聞こえに関するよくある疑問について、耳鼻咽喉科の専門家に聞きました。

【図】難聴・耳鳴り治療の選択の流れはこちら

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疑問1 「聞きにくい」のは年のせいだけとはかぎらない?

 ことばの聞き取りが悪くなるのは、耳の聞こえの悪化だけでなく、脳も関係していることがあります。耳から入ってきた音を聞き分け、その音が持つ意味を理解するのは脳です。音が電気信号として脳に伝わり、脳が音を情報として処理して、ことばを聞き取っています。そのため、加齢などで脳が劣化してしまうと、音をことばとして理解することが難しくなります。

 難聴には加齢性難聴以外にも、遺伝性難聴や急に生じる突発性難聴、慢性的に生じる騒音性難聴、外耳道炎や急性中耳炎など一時的な症状による難聴もあります。耳垢(あか)が過剰にたまったことによる耳垢栓塞(じこうそくせん)もありますが、脳の病気による難聴もまれにあるため、急に聞こえが悪くなったら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

疑問2 ある日突然、病気などで耳が聞こえなくなることもある?

 突然、耳が聞こえなくなる典型的な病気といえば、突発性難聴とメニエール病です。いずれも内耳の異常によるもので、片耳だけが急に聞こえにくくなります。治療開始が早いほど回復の可能性も高まるため、急激な聞こえの低下を自覚したら、早急に受診しましょう。

 このほか、痛みのない中耳炎(滲出性<しんしゅつせい>中耳炎)や、耳垢がたまってしまったことによる難聴(耳垢栓塞)もあります。高齢者は耳垢栓塞を放置しておくと、難聴の放置と同様、認知症のリスクを高めるなど、加齢性難聴を悪化させてしまう可能性もあります。

疑問3 人によって難聴の進み方が違うのはなぜ?

 難聴の進み具合は、疾患によって異なりますが、加齢性難聴では個人差が大きく、遺伝子タイプによって異なると考えられています。一般的に約5年単位で悪化していく傾向があり、一度悪くなり始めると悪化のスピードは上がりやすくなります。

 また高齢になるにつれ、変化のスピードは上がり、80~90代になると、1年単位で大きな変化がみられる人もいます。聞こえの悪化が早まっていると感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

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高音域のサ行の摩擦音が弱くなる