大久保通りは道幅が狭く、週末は観光客でごった返している。写真の一部を加工しています(写真=國府田英之)
大久保通りは道幅が狭く、週末は観光客でごった返している。写真の一部を加工しています(写真=國府田英之)
路地に貼られた住民からの注意書き(写真=國府田英之)
路地に貼られた住民からの注意書き(写真=國府田英之)
住宅の敷地内に放置された食べ残しのごみ(写真=住民提供)
住宅の敷地内に放置された食べ残しのごみ(写真=住民提供)

 K-POPなど韓流ブームの聖地と言われ、多くの若者らが行きかう東京・新大久保。その活況の裏側で、観光客によるごみのポイ捨てなどマナーの悪さが深刻な事態となっている。悩まされ続ける地元住民に話を聞くと「こんな汚くてうるさいところには住み続けられない」と泣く泣く街を離れたり、転居を検討する人も出始めている。

【写真】観光客が住宅の敷地内に捨てていった食べ残しのカスと容器

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 韓流ショップや韓国料理店が軒を連ねる「大久保通り」。天気の良い金曜の午後に訪れると、さまざまな年齢層の女性やカップルらでごった返していた。その大久保通りにつながる細い路地の入り口で、ひとりの女性が、立ち食いしながら路地に入ってくる観光客らに声をかけ、通行の自粛をお願いしていた。

「この先は住宅地です。住民が迷惑しているので食べ歩きはご遠慮ください」

「食べ歩きは新宿区が指定した場所、区立公園や交差点のゴミ箱設置場所でお願いします」

 彼女は祖父の代から近隣に住んでいる50代の女性で、ここ3年ほど、土日や祝日など仕事の空き時間にここに立って呼びかけを続けているという。

 路地は公道であり、立ち入りが規制されているわけではない。立ち食いも違法行為ではない。ただ、この女性が体を張って注意を呼びかけないといけないほど、住民たちの静かな暮らしは阻害され続けているのだという。

 大久保通りは歩道が狭い。土日や祝日はただでさえ観光客でごった返すが、さらに通りには韓国版アメリカンドッグ「ハットグ」「チュロス」「タピオカ」など様々なテークアウトの人気飲食店が多数できた。店の前には行列ができ、さらに立ち食いの客が滞留するため、歩道は「密」の状態だ。お目当ての食べ物をテークアウトしたはいいものの、歩道に食べる場所が見つけられなかった人は、足が路地に向かう。その先には、すぐに住宅地がある。

 路地で目に付くのが、住民からの注意書きだ。「食べこぼし、ゴミの投げ捨て迷惑しています」とハットグの写真が入った張り紙や、「住宅地につき座り込み、飲食、喫煙禁止」と日本語、韓国語、英語で書かれた張り紙もある。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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