元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこう指摘する。

「河井夫妻の逮捕は当然だが、もらって買収された被買収の人たちに今もって、検察から処分が下されないのは、おかしい。法廷で大半の地方議員が買収目的でカネを受け取ったと認めているのにおとがめなしです。2019年の参院選で自民党本部が1億5千万円もの選挙資金を河井陣営に送った使途もうやむやのままになっています」

 後ろめたさから自民党の広島の地方議員らは動きが鈍く、盛り上がりに欠けているという。事実、広島県連幹部も「事件に関わった議員は動かないで」と注意しているという。

小泉進次郎環境相、河野太郎ワクチン担当相ら知名度が高い幹部に応援要請をしようにも、イメージが悪すぎて、とても打診できない状態です」(自民党幹部)

 案里氏が当選した19年の参院選では広島選挙区定数2に対して野党も議席を獲得。もし自民党が今回、敗れると2議席を野党に独占されてしまう前代未聞の事態となる。そして4月に入り、震え上がるような世論調査の数字が届いたという。

「3月末には5ポイントほど自民党の西田氏が野党候補の宮口氏をリードしていたが、4月に入って形勢が変わってきた。今はほぼ横並び。西田氏がやや優勢も2ポイントほどの差しかない。まだ出馬表明して1ヶ月にも満たない宮口氏に追い上げられている。西田氏の事務所開きの際、広島県連会長の岸田文雄元外相が地元の県議、市議を集めて、ハッパをかけていた。それなのに支持は上がらず、手応えがないいかに河井夫妻の事件の影響が大きいのか痛感している」(自民党の広島県議)

 この数字に最も慌てているのが、自民党総裁である菅義偉首相だ。
案里氏の選挙戦では何度も広島入りして、仲良くパンケーキを一緒に頬張る動画まで公開した。

「菅首相にとって広島は相性がいいと思っていたようだ。広島だけは死守し、1勝1敗1不戦敗というのが菅政権の既定路線。そこから衆院解散総選挙の日程を考えようという方針だった。広島もダメだとなれば、菅降ろしが始まるだろう」(自民党幹部)

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菅首相は伊勢神宮参拝後、名古屋入りも