つまり今年の松山は、ロングホールでの“貯金”をミドルホール、そして特にショートホールで吐き出しているということ。大会ごとのホール・バイ・ホールを見た時に、1大会のパー5合計は全トーナメントでアンダーだったが、これがパー4合計になるとアンダーをマークしたのは2試合で、パー3合計だと1試合しかない。つまり、ショートとミドルで取りこぼしをしないということが、松山の浮上の鍵の一つと言えそうだ。
そしてもう一つのデータが「ストロークス・ゲインド」だ。「ストロークス・ゲインド」は、国内ではまだ馴染みがないものの、米ツアーでは公式スタッツとして当たり前になった数値で、ドライバーやアイアン、パットがどの程度スコアに貢献しているかをフィールドの平均値との差で表したデータとなっている。
例えばパットの貢献度を表す「ストロークス・ゲインド・パッティング」の平均が2.0だった時、選手Aが1.5パットなら「ストロークス・ゲインド・パッティング」は+0.5。逆に2.5パットなら-0.5となる。他のフィールドよりも、どれだけその大会で優れているかを相対的に数字で算出したものが「ストロークス・ゲインド」。平均パット数やパーオン率など、1選手のスタッツだけを見たデータとの差はこのあたりにある。
難易度の高いコースばかりでプレーすれば、簡単なコースを回ってばかりの時よりも普通はスタッツが悪くなるが、「ストロークス・ゲインド」は他選手との相対的なデータなので、より正確な実力が出やすくなる。
では、松山の「ストロークス・ゲインド」を見るとどのようなことが分かるのだろうか。ツアー初優勝を挙げた2014年からのこのデータを見ると、一貫しているのはパッティングの悪さ。2014年から今季まで、「ストロークス・ゲインド・パッティング」が二桁順位だったのは3回で、残りの5回は三桁のランク。3勝した2017年が-0.345で167位なら、昨季と今季は170位となっており、他のプロたちに比べてパッティングがスコアに貢献していないことが分かる。
これだけ見たらツアーで生き残ることは難しいだろう。ところが、松山はこのパットのマイナスをパット以外のプレーで挽回しているのだ。