「人口の少ない磐梯町は高齢化も進み、自治体の存続すら危うい状況です。そこで、少ない人口でも住民が豊かな生活を送れるよう、デジタル技術も取り入れて町を変革する『自治体DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル変革)』を昨年スタートさせました。町外に住みながら“複業”として町のDXにかかわってくれる“複業人材”を集めるのも、この企画の目的です」

 デジタル化を担うシステムやセキュリティーの専門家を町内で探すのは難しい。そこで同町は、町外から人を集めることに力を入れている。同町ではすでに、町外のIT専門家やデザイナー、スタートアップ企業の経営者らを町の「デジタル変革審議会」「官民共創・複業・テレワーク審議会」の審議委員として招き、オンラインで審議会を実施している。自治体の審議会を完全にオンラインで行うのは、全国で初の試みだという。

「町外に住みながらも町おこしや仕事にかかわってくれる『関係人口』を増やすために、まずは磐梯町に興味を持ってくれる人を増やしたい。『モノで釣る』というわけではないですが、まずは何がきっかけであれ、磐梯町と接点を持ってもらえたら、と」

 そう話す五十嵐さん自身も、東京都在住だ。中学卒業まで磐梯町で育ったが、進学とともに町を離れた。現在はフリーランスで企業のブランディングや広報の仕事をしながら、業務委託の磐梯町職員としてDXの推進役を担う。まさに「関係人口」の一人だ。SNSやYouTube、各種アプリなど、従来の役場職員だけでは扱いにくかったデジタルツールを使って、積極的に町の魅力を発信している。

 今回のイベントは同町の官民共創拠点がある「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」(東京・渋谷)から配信し、3人のゲストが登場した。若者に日本酒の魅力を広める女性グループ「PON酒女子」代表の塚原彩衣さん、首都圏を中心におむすびのケータリングやイベント開催をしている「笑(わらい)むすび∞」代表の山田みきさん、進行役の渡部久美子さん。3人はいずれも同町に縁があるものの、都内在住で町の出身者ではない。これには“町外に住んでいても町に関わることができる”ということを参加者にアピールする狙いもあるという。

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