今でこそ当代随一の人気女性芸人となっている近藤だが、子どもの頃はどちらかというと内気で人見知りをするタイプだったという。そんな彼女が生まれ変わるきっかけになったのは、小学生のときにガールスカウトに入ったことだった。キャンプやハイキングなどの集団行動を通して、人前に出て話をする度胸を身につけることができた。

 そして、人を笑わせることの快感に目覚めた近藤は、芸人を目指すことを決意。よしもとのお笑い養成所「NSC」の門を叩いた。相方の箕輪はるかとは在学中に知り合った。

 東京出身で実家から通っている、社会人経験がなくどこか垢抜けない暗い雰囲気がある、といった共通点のあった2人は、意気投合してコンビを結成した。

 2004年にNSCを卒業した2人は、2005年に早くも『ゲンセキ』(TBS)という若手芸人のオーディション番組で勝ち上がり、『10カラット』というコント番組にレギュラー出演することになった。この番組をきっかけに、ハリセンボンと彼女たちの後輩であるオリエンタルラジオの2組が一気にスターへの階段を駆け上がっていった。

 オリラジの一時期の勢いがあまりに圧倒的だったためにそれほど目立ってはいないが、実はハリセンボンも同じ時期にじわじわと人気を伸ばしていた。オリラジはどちらかと言うとタレント性のあるコンビだったが、ハリセンボンは『エンタの神様』『M-1グランプリ』などでもネタを披露して、ネタの面白さも評判になっていた。

 おかずクラブ、3時のヒロイン、ぼる塾など、ポップな魅力を備えた若手女性芸人は毎年のように出てくるようになったが、ハリセンボンはその先駆けとも言える存在である。

 今の時代の最先端を走る気鋭の女性芸人たちと比べても、春菜はまだまだ力負けしていない。「芸人の完全体」と称される女王・近藤春菜が、『スッキリ』という巣を離れて、バラエティ戦線に返り咲くときが来た。ここからの彼女の活躍が楽しみだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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