この「無料化」の強みは、13年前に出版された「FREE <無料>からお金を生み出す新戦略」で予言されていました。無料で公開した方が大きなリターンはあるという理論です。「フリー素材化」は、実はYouTubeでは最強の戦略です。「マインクラフト」は、YouTubeでゲーム実況をフリー化させて世界中で大人気となったゲームです。マインクラフトをリリースした時、YouTubeでは著作権の規定で収益を版元と折半したり、ネタバレ防止のためにゲーム実況が禁止されているタイトルが多かった時代でした。そんなときに、マインクラフトはゲームプレイ動画のフリーでの公開使用をOKしたのです。結果的に、多くの実況動画や実況チャンネルが誕生し、ゲーム実況というジャンルが本格的に確立され、マインクラフトは大ヒットしました。

 現在では多くのゲームや新作アプリはYouTubeで実況されることを前提としてリリースしています。マインクラフトは「フリー素材化」の強みを語る上では外せないコンテンツです。また、現在では多くの音楽はYouTubeで無料で聴くことができます。かつては有料のDVDやファンクラブ特典などでしか視聴できなかった有名なアーティストのプロモーションビデオやライブ映像も、YouTubeで無料で見ることができ、YouTubeを発端としたヒットソングも多く誕生しています。

 音楽に関しては、二次利用できる「フリー素材化」はまだ浸透してませんが、無料で視聴できる「フリー化」は普及したといえます。フリー化しているコンテンツとしては、アニメも挙げられます。現在、多くの公式アニメがYouTubeで視聴できるようになっています。1話や最新話のみ、期間限定公開や全話など、コンテンツによって異なりますが、公式チャンネルの数は増加しており、アニメを無料で視聴できます。

「フリー素材化」としては、ひろゆきさんはもちろん、二次創作に関する規定が緩やかな東方Projectも、多くのYouTubeチャンネルでキャラクターが利用されています。原作を知らなくても、東方Projectのキャラクターの認知度は非常に高いです。このような二次創作からの人気は、芸能界で例えると近藤春菜さんのネタで若者に対する知名度が上がった角野卓三さんや、コロッケさんのモノマネで再ブームした美川憲一さんがイメージしやすいと思います。

 二次創作は、原作者にも恩恵があります。YouTubeではひろゆきさんをはじめとした「フリー素材化」の流れは今後も進行していきます。もちろん、原作のイメージや世界観を厳密に守るディズニーなどのコンテンツもあるので、一概には言えませんが、多くのコンテンツは「フリー素材化」の恩恵が大きいため、フリー素材化は拡大します。YouTube以外でも、1~3巻無料の電子漫画書籍を試しに読んで、続きを購入したことがある方も多いのではないでしょうか。

「フリー化」の強みは、コンテンツへのファーストコンタクトが無料で、誰でもアクセスできる点です。無料でコンテンツに触れさせるビジネスを「フリーミアム戦略」と呼びます。YouTubeの動画は基本的に無料で見ることができるため、「フリーミアム戦略」の入り口として最適です。ひろゆき氏が示した二次創作による認知の拡大は莫大であり、「フリー素材化」の流れは今後も加速していくと思われます。