また、夫婦が同時期に「メンタル不調のリスクあり」とされた世帯は3.4%で、その関連要因には、父親の長時間労働(週55時間以上)、母親の睡眠時間の短さ(6時間未満/日)、子どもが6~12カ月であることなどが示されたといいます。

 保健関係者が使うメンタル不調のスクリーニングツールのひとつに、次のような項目があります。

・神経過敏に感じる
・絶望的だと感じる
・そわそわと落ち着かない
・気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じる
・何をするのも骨折りだと感じる
・自分は価値のない人間だと感じる

 上記のように感じることが多くあって長引くような場合は、メンタル不調に注意しましょう。父親も母親も、自分と相手のメンタルヘルスを大切にし、心配な場合は、地域の保健師やかかりつけ医などに相談する、あるいは相談することを促してください。 

 竹原さんは、冒頭の男性について次のように言います。

「母親の話を父親がよく聞くことは、とても大切です。しかし、長時間労働のあと、妻が思うところを一気に話すのを一方的に聞くのは、簡単ではありません。それも会話ではなく、妻の不安や不満、孤立感を癒やすためにただ傾聴することが求められることもあります。例えば夕食を一緒にとりながらなど、リラックスした状態で聞ければ、これほどつらいことにはならなかったと思います」

 家事・育児に妻のメンタルサポートなど、父親には子育ての多くの役割が期待されています。しかし、長時間労働の是正は進んでおらず、それも含め、父親の子育てを後押しする社会的な仕組みが必要であると竹原さんは指摘します。

 そもそも日本では、支援の対象は母子とされ、父親は母子の支援者という位置づけでした。ところが、2018年12月公布の成育基本法で、支援の対象に「保護者」が加わり、父親も支援の対象と位置づけることができるようになりました。また、その基本方針に「男性の産後うつ等に対して子育て経験のある男性によるピアサポートの実施等、出産や子育てに悩む父親に対する支援を推進する」が盛り込まれ、2021年4月から自治体の取り組みが求められるようになりました。

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