「上に立つ人は厳しさと優しさの両方が必要。『監督はチームを作るまでが仕事だ』といつも言っていた。監督が試合でサインを出すことは少ない。大型トレードなど、派手なことででチームを活性化させるけど、それだけではない。選手を細かいところまで見て、適材適所を見極める。選手のモチベーションを高める。その上で感情をあらわにして勝ちにこだわる。計算していたはず。やはりチームは締まるし勝てたよね」

「強力なバックアップを受け、巨大戦力があったから勝てた」という声もある。しかしチーム=人を動かすのは最後は人だ。星野の人間的魅力が周囲を巻き込み、中日を戦う集団へ導いたのは間違いない。その源にあるのは、気迫でもあった。

「時代が大きく違うのはあるかな。今の選手はずいぶん巨人への意識が薄れている。まあ俺らの時代の話で、ここ10年ぐらいはないかもね。でも相変わらず巨人は強い。そこに勝たないと優勝できない」

 中日はここ数年、戦力も整い今季は久々の優勝への期待も高まっている。

 精神論だけで勝てないのは分かっている。時代も大きく変化し、何かあれば『パワハラ』とも呼ばれる。しかし勝つために厳しさが必要なことも、また不変だ。

「今年は(優勝)あるよ」と宇野は語る。「優勝するためには、星野さんのような破天荒なタイプも時には必要だ」と付け加えてくれた。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。