こうした事情のため、文政権が東京五輪後、米朝首脳会談をもう一度、プロデュースしても高齢のバイデン大統領が参加するかどうかは、不透明だ。最近、ホワイトハウスのスポークスマンは「バイデン大統領は金正恩に会う意向がない」とはっきり話している。

 冷静的に考えれば、北が核を放棄する可能性も低いし、たとえ米朝会談が行われても、成果が何も出ないかもしれないのに、バイデン大統領が会談するメリットがあるのか、ということも考えなければいけない。

 文政権の支持率低迷の起爆剤に東京五輪を利用するという戦略は、かなり厳しい道のりであることは間違いない。(在ソウル・ジャーナリスト 朴承珉)

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朴承珉

朴承珉

朴承珉(パクスンミン)。ソウル在住ジャーナリスト。時事通信ソウル支局記者を経て、「文藝春秋」「週刊文春」のソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ。平壌や開城工業団地、板門店、金剛山など8回以上北朝鮮入りして取材。黄長燁・元朝鮮労働党国際担当書記の米議会での証言に同行取材(03年)。金正男氏の暗殺された直後(17年2月)、2回マカオ入りして取材。日韓メディアに多数寄稿している。

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