「読売新聞が新社屋を建てるのも、別に新聞販売が好調で税金対策で建てたわけでも何でもないんです。むしろ反対で、新聞販売が不調だから、今後のことを見越して、テナント料を取れるように新ビルにするということのようです」(津田大介『メディアの仕組み/夜間飛行』)

 潤沢な資金があると思われる巨人だが、そうとも言えない。新聞不況の真っ只中、親会社の経営は苦しく、他新聞社のように本業以外のビジネスも欠かせない。読売グループも13年11月に完成した現社屋ビル同様、新球場建設時には周辺施設とともに多用途での活用が必須となるはずだろう。

 親会社が鉄道会社の球団も、球場への投資に関して似た部分もある。阪神甲子園球場は07年から10年にかけ『21世紀の大改修』を行った。西武のメットライフドームは約180億円を投入する『ボールパーク化』が3月8日に竣工式が行われた。魅力ある球場に客が集まれば、本業に直結する。

「球団、球場の魅力は鉄道利用に直結する。かつて南海、近鉄、阪急などが身売りしたのは、本業への影響がなくなったのも理由の1つ。同様に巨人が親会社の新聞販売部数を増やす時代ではない。新球場には集客とともに、ビジネスでもお金を生み出すことが求められる」(在阪スポーツ紙記者)

ドジャースがロサンゼルス・メモリアル・コロシアムで企画試合をやった時は、大きな話題となった。長い歴史を誇る球団が数年、変わった場所で戦うのは逆におもしろい。その後に使う新球場の価値も高まる」(スポーツ新聞MLB担当記者)

 ドジャースは2008年3月29日、レッドソックス戦(オープン戦)をロサンゼルス・メモリアル・コロシアムで開催。ドジャースのロサンゼルス移転50周年と銘打たれ、野球の試合の観客数としては史上最多の11万5300人の観衆を集めた。

 様々な問題が起き、国民からの絶対的な支持も得られない東京五輪。象徴である新国立は“レガシー”どころか、今のままでは無用の長物になりかねない。数年であれ、巨人が本拠地として使用したとなれば、話題性などは飛躍的に高まる。巨人の本拠地・新国立は、あながち的外れでもなさそうな気もする。