前評判通りの投球を披露した天理の達孝太 (c)朝日新聞社
前評判通りの投球を披露した天理の達孝太 (c)朝日新聞社

 連日熱戦が続いている選抜高校野球。今大会は観客数1万人を上限としており、プロ野球のスカウト陣も大会本部から割り当てられているのは1球団5人と制限されているが、それだけでは足らずに一般席を購入して視察している球団も見られた。それだけ注目選手が多い大会だったとも言えるが、中でもドラフト上位候補としての評価を受けたと思われるのが小園健太(市和歌山)、畔柳亨丞(中京大中京)、達孝太(天理)の本格派右腕3人だ。

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 まず大会前からナンバーワンの呼び声が高かったのが小園だが、1回戦では県岐阜商を相手に4安打完封と前評判通りのピッチングを見せた。この試合、相手打線も相当小園を研究してきたことが伺え、5回までは毎回走者を背負うピッチングで6四球を与えるなど決して楽な内容ではなかったが、それでも最後まで落ち着いて0を並べたのはさすがという他ない。

 そして更に凄みを感じたのがリリーフで登板した2回戦の明豊戦だ。1点を追う5回からマウンドに上がると、最初の打者をいきなりストレート3球で見逃しの三振。次の打者にも145キロを超えるストレートを続けて最後はカットボールでサードゴロに打ち取ると、3人目は変化球を最初に続けて最後はアウトコースいっぱいのストレートで見逃し三振を奪って見せた。

 投球のテンポが抜群に早く、最初からエンジン全開で相手打線をねじ伏せることで、試合の流れを持ってくるという意図が強く感じられたが、このような投球が甲子園の大舞台でできるというのは並の投手ではない。最終的には7回に決勝タイムリーを浴びて敗れたものの、2試合14回を投げてわずか1失点とその安定感は抜群だった。少し投げ急いでか、体の割れが不十分だったのは課題だが、フォームに致命的な欠点はなく、全ての面で高校生ではトップレベルの投手である。このまま順調にいけば1位指名の可能性が高いだろう。

 畔柳は1回戦最後の16試合目に登場。専大松戸との息詰まる投手戦となったが、要所を締めて12奪三振完封勝利をマークした。立ち上がりはスピードもコントロールももうひとつとういう印象だったが、2回以降は一気にギアが上がり、力で相手打線を圧倒。最速147キロは小園と同じ数字だったが、終盤までスピードがほとんど落ちることがなく、アベレージの速さ、ボールの勢いに関しては明らかに上回っているように見えた。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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畔柳は先輩の高橋宏斗に続けるか?