一方、花巻東は、先発・新田大智が初回に3ボールから先頭打者に死球を与えたあと、次打者にも2球続けてボールと制球が定まらず、わずか6球で降板。だが、無死一塁から緊急リリーフした伊藤翼が右横手からコースを丹念につく丁寧な投球で、10回まで6安打4奪三振1四球の無失点で勝利投手に。この結果、公認野球規則10.19(f)により、完投していないのに“完封”が記録された。

 センバツでは、29年の準決勝で第一神港商・西垣徳雄が1回無死一、二塁から延長11回まで無失点に抑えて以来、89年ぶりの珍記録だった。

 2月に左足首を骨折するアクシデントを短期間で克服し、甲子園の大舞台で一世一代の快投を披露した伊藤は「最高です。点を取れない分、しっかり投げようと思った。10回(表)をリズムよく抑えたら、点を取れると思っていた。2番手の役目を果たせた」と、こちらも増居同様、クールな受け答えだった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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