結果は遊飛に倒れたが、チームは4強入り。兄弟揃って甲子園の打席に立ったことと、センバツ出場が縁で四コマ漫画に登場したことも、「忘れられない思い出」になった。

 高校卒業後も野球を続け、奈良産業大学で主将も務めた弟は、当時雑誌の取材で「将来自分の子供が生まれたら、女の子なら普通の名前。男やったら、同じ道を行かせてもらいます。5文字しっかりつけさせてもらいます」とキッパリ宣言していたが、その後、甲子園に5文字の名前の球児は登場していない。

 今度も北陽の話題である。2007年、13年ぶり8度目の出場となった北陽の主将は、なんと、人気漫画「タッチ」の主人公・上杉達也と同姓同名だった。

 同作品の大ファンだった母・泰子さんが命名したもので、小学3年のときに軟式野球のチームに入ると、たちまち「タッちゃん」の愛称で人気者になった。

 当初は注目され過ぎて恥ずかしい思いをしたという本人も、「達也が持つ意志の強さやあきらめない粘りを尊敬している」と憧れるようになった。

 高校では1年秋に投手から外野にコンバートされ、漫画と同じ背番号1の夢は実現できなかったものの、3番打者として新チーム以来、打率3割2分1厘、3本塁打、31打点の好成績。エースナンバーを背負う秋本達也との“Wタッチコンビ”でチームを甲子園に導いた。

 作者のあだち充氏も「北陽のタッちゃんも頑張って」とエールを贈るなか、1回戦の鹿児島商戦に臨んだ上杉は、2回に右中間三塁打を放ち、次打者のタイムリーで生還。1対0の勝利に大きく貢献した。本番直前の練習試合で不調が続き、打順を5番に下げられたため、「悔しかった。見返してやろうと思った」ことが大舞台での快打を生んだ。

 チームは2回戦で広陵に3対5で敗れたが、上杉は3点をリードされた9回無死二塁、現広島の中田廉から執念の左前安打を放ち、次打者の犠飛を呼び込んでいる。

 同姓同名といえば、78年に創部23年目で初出場をはたした島根県西部の進学校・益田の3番打者は、その名も野村克也。ポジションはセンターだが、チームトップの打率4割4分9厘をマークし、“山陰のムース”の異名をとった。

次のページ
“野村克也”は他にも…