■補聴器で改善しない場合、人工内耳という選択肢も

 補聴器を使っても聞こえが改善しない場合、補聴器が適切に調整されていない可能性があり、調整し直すことで改善することもある。また、高齢になり、耳に加え脳の機能も低下すると、脳に届く音を明確に聞き分けられなくなり、補聴器で耳に入る音を大きくしても、言葉を正しく聞き取れない。しかし、その場合も「できれば補聴器を使い続けることをおすすめしたい」と大石医師は話す。

「加齢により衰えた耳の機能は戻りませんが、補聴器で脳に音を届け続けることで働きが活性化し、言葉の聞き取りが改善する人もいます。全く聞こえない状態より、補聴器で可能な限り音を補いながら生活することが望ましいでしょう」(大石医師)

 補聴器で聞こえが改善しない場合、人工内耳を選択することもある。音を電気信号に変換して脳に伝える方法で、使うためには手術が必要だ。2017年に適応が広がり、より早い段階での手術が可能になったこともあり、近年では高齢者の手術数が増加傾向にあるという。ほかにも中耳に振動子を固定して音を聞く人工中耳や、側頭骨にインプラントを埋め込む骨固定型補聴器などの選択肢もある。

「比較的安全な手術ですが、心肺機能が低下している人などは選択できないこともあります。今は高齢でも健康状態が良好で活動的な方が多く、聞こえを改善したいという希望がある場合は人工内耳を選択します」(同)

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【医師との会話に役立つキーワード】

《補聴器相談医》
日本耳鼻咽喉科学会が認定する、難聴の治療や補聴器に関する専門医。補聴器装用を考えたときは、補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科を受診して、必要な検査などを受けることが大切。

《認定補聴器技能者》
補聴器に関する専門知識と技能を持ち、補聴器販売店で補聴器の調整や試聴に携わる。補聴器を購入するときは、この専門家がいる認定補聴器販売店に行くのが安心。

【取材した医師】
東京慈恵会医科大学病院 副院長・耳鼻咽喉科教授 小島博己医師
慶応義塾大学病院 耳鼻咽喉科 外来医長 大石直樹医師

(文/出村真理子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より