週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「人工関節置換術・股関節」の解説を紹介する。

【図解】人工関節置換術・股関節の治療の選択の流れはこちら

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 股関節の痛みは、関節軟骨が徐々にすり減って炎症が起こる変形性股関節症が原因であることが最も多い。変形性股関節症は、加齢によって発症率が増加するが、日本人はもともと股関節の形に問題がある人が多いため、比較的若い頃から変形性股関節症を発症しやすい。

 症状は、歩き始めや立ち上がるときの足の付け根の違和感や痛みに始まり、進行するにつれて痛みの頻度や強さが増していく。股関節が徐々に変形して動きが悪くなると、歩き方が変わったり、深くしゃがめない、靴下がはけないなど、日常生活で不便を感じたりするようになる。

 変形の進行を遅らせるために基本となるのは、保存療法だ。まず、股関節の負担を減らすために、体重をコントロールし、姿勢や生活動作を見直す。そして、股関節の動く範囲を広げる、あるいは筋力をつけて関節の安定性を高めるために、病状に応じて適切な運動療法をおこなうことが有効だ。炎症や痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬などを用いた薬物療法を併用する。

 保存療法で改善できない、または関節の変形が重度の場合に手術が検討される。九州大学病院の中島康晴医師はこう話す。

「手術は、画像検査による病期の進行度だけでは決めません。患者が苦痛を訴え、通常の社会生活ができない場合に提案します」

■人工関節の耐久性が向上、短期間で社会復帰できる

 手術法は主に三つある。「関節鏡視下手術」は、低侵襲だが効果は限定的で、股関節の形態異常がある人にはすすめない。中心となる「人工股関節置換術」は、変形した股関節を人工関節に入れ替える手術で、痛みを取り除く効果が高い。「骨切り術」は、骨を切って股関節を負担の少ない形に変える手術で、変形がほとんどなく活動度が高い、若い人に向く。

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