近年、PMS・PMDDなど、月経に関する女性たちの悩みにようやくスポットが当たるようになってきたが、まだまだ月経前に身体的・精神的不調が起こることは、女性でさえ知らない場合もある。

「勤務する薬局で漢方相談を受けていても、『月経に関することは家族にも言えなかった』『我慢しないといけないと思っていた』という声をよく聞きます。同世代の男性はPMS・PMDDへの認知はあるほうだと思うのですが、年齢が上がるほど男性の認知・理解が少ない印象です。『昔から無理をしてきてPMSになり、更年期の症状も夫にわかってもらえず……』などとおっしゃる方もいます」

 柳沢さんは、「誰にも相談できず、体調不良に悩む方の役に立てば」と、「家庭でできる漢方の知恵」をテーマに、2年前にYoutube「やなゆう漢方ちゃんねる」を開設。月経関係の動画には、10代から「母親にも話せず悩んでいた」というメッセージをもらうこともあるという。

「『不調を気軽に打ち明けられる場所がある』『理解してくれる人がいる』ということはとても大事だと思います。ただ、社会にそうした場所をつくることも大切だと思いますが、まずは一番身近である家庭がその場所になることだと思います」。

■   漢方薬剤師としての出発点

 柳沢さんが、月経に伴う不調に気づいたきっかけは、漢方との出会いだった。実は、漢方薬剤師を最初から目指していたわけではなく、新卒で就職したのは外資系の製薬会社。働き出して間もなく、胃腸系の体調不良に悩まされるようになった。頭痛や目の奥の痛みも出始め、いろいろな病院を受診。脳神経外科でMRIを撮るも異常はなく、偏頭痛薬を処方された。

「さまざまな検査を受けましたが、どこも異常なし。それでも自分としてはずっと体調不良に悩んでいました。頑張りたいのに頑張れない。友だちと楽しく遊びたいのに、出かけると疲れてしまい、心から楽しめない……。そんな自分の身体が嫌で健康になりたくて、サプリメントや健康食品、アロマなどの代替医療の勉強をし始め、24歳のころ、漢方(中医学)にたどり着きました」

 漢方を学び始めて初めて、頭痛や過食、肌が荒れやすいのは生理前に多いことに気がついた。そこで「これはPMSなんだ」と自覚。

 漢方薬局にかかり、漢方薬を服用するようになってから、1ヶ月程度で「いいかも」と効果を感じ始める。半年ほど続けると、これまで悩まされてきた胃腸系の不調や慢性疲労、頭痛が軽減。それでも身体が疲れてくるとやはり頭痛が出ていたが、やがて1年経たたないうちに、頭痛もなくなってしまった。

 漢方のおかげで元気になった柳沢さんは、今後の自分や家族、友人たちのために、本格的に漢方の勉強を開始。日本で漢方を学んだ後、中国・北京での研修を経て、25歳で漢方薬剤師としてき始めた。

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