当然、既存システムは混乱するし、アレルギー反応を起こしたりもする。それもまた、興味深いことだ。「香水」における「ドルチェ&ガッバーナはNHKで歌えるか」論議しかり「うっせぇわ」批判しかり、である。

 しかも、こういう状況にはヒット曲を生み出した当事者自身も混乱する。新勢力の強みは、従来のシステムに縛られない、作り手個々の着想やつながり、発信の自由さだったりするわけだが、曲のヒットにともない、従来のシステムにも巻き込まれるというか、つきあわされることにもなるからだ。

 2月19日放送の「ミュージックステーション恋うた3時間SP」(テレビ朝日系)では「春を告げる」のyamaや「ポケットからきゅんです!」のひらめがテレビ初歌唱を披露した。また「浮気されたけどまだ好きって曲。」のりりあ。も「Mステ」初歌唱。3人とも顔出しをせずに活動してきただけに、そのパフォーマンスが注目された。

 このうち、りりあ。は顔出しをしない理由についてこう語っている。

「ただ、単に自信がないというのと…(笑)。あとは、好きなアーティストの皆さんは顔出しをしていない方が多く、弾き語りするのに顔っていらないかな、と思っています」(フジテレビュー!!)

 その言葉通り、顔から下だけを映す方法で歌唱。yamaも顔の上半分を隠すかたちで歌唱したが、ひらめだけは「素顔で音楽番組初歌唱!」との触れ込みだった。しかし、寄りのカメラワークは少なく、しかも画面全体を少しぼかして顔をはっきりとはわかりにくくしていた。高齢の視聴者などは、自分の目が悪くなったのではと不安になったかもしれない。

 おそらく、彼女と番組スタッフとのあいだで相談して決めたのだろう。ニューミュージックブームの頃には、顔出しをしたらイメージと違っていた的な悲劇がちょくちょく起きたものだが、これも現代的な自由さのあらわれといえる。

 かと思えば、その前週の「ミュージックステーション」には「ドライフラワー」の優里が出演。この番組への初登場だったのみならず、いわゆる文春砲によるスキャンダル報道の直後とあって、大いに注目された。

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ピュアな歌世界なのにエグいスキャンダル