テスト最終日には、ホンダがパワーユニットを供給するもう1チームのアルファタウリも魅せた。午後に担当した角田裕毅が初テストながら、2番手のタイムをマークし、周囲を驚かせた。しかし、当の本人は2番手という結果をあまり気にしていない。

「2番手という結果よりも、最終日にトラブルなく、走ることに集中できたことが良かった。この数日間でたくさんのことを学び、チームのために重要なデータを収集することができたので、これからファクトリーに戻って開幕戦に向けて分析します。とにかく、この3日間を最高の状態で締めくくれて良かったです」

 開幕戦バーレーンGPはプレシーズンテストと同じバーレーン・インターナショナル・サーキットが舞台となる。テストが日中に行われ、グランプリは夕方から夜に行われるという違いはあるが、ルーキーの角田にとっては走り慣れたサーキットでF1デビューを迎えるのは、悪くない。デビュー戦でどんな成績を収めることができるのかは、ライバル次第だが、予選Q2進出はほぼ間違いないだろう。あとはレースでいかにタイヤをマネージメントできるか。デビュー戦初入賞も夢ではない。

 3日間のテストで、最も謎に包まれたのがメルセデスだった。初日にギアボックストラブルで出端を挫かれたチャンピオンチームは、2日目にバルテリ・ボッタスがトップタイムをマークしたものの、王者ルイス・ハミルトンのペースは上がらず、3日間全体で5番手にとどまった。

 メルセデスは過去にもテストで最速ではなかったものの、シーズンに入れば強さを発揮してきているだけに、現時点でその実力を推し量るのは難しい。だが、そのポテンシャルはともかく、3日間での走行距離が10チーム中、最下位だったことを考えれば、テストが順調でなかったことは事実だろう。

 それ以外にも、今年は2005年と2006年のチャンピオンであるフェルナンド・アロンソが、ルノーから改名したアルピーヌより3年ぶりに復帰する。またそのアロンソとタイトル争いを繰り広げた7冠王者のミハエル・シューマッハの息子、ミック・シューマッハがF1でデビューする。

 さまざまな思いを胸に、72回目のF1が開幕する。(文・尾張正博)