それだけ精神疾患に対する偏見や差別は大きな問題であり、子どもにも教師にも理解してほしいという意図があります。

――学ぶべきことがたくさんあり、どれも大切なことですね。心の健康や精神疾患について扱う授業数は数時間ですが、子どもたちがしっかり理解し、知識として根づかせていくことはできるのでしょうか。

 心の健康や精神疾患についての授業時数は、小中高それぞれ4時間程度になります。ただ、授業の中で数時間学んだだけでよいとは思いません。特に小学校や中学校の場合、心の健康やストレス対処は日々子どもたちと接している学級担任などが行う日常の指導の内容とも関連するので、授業時間内だけで考えるのは難しい。また、学級担任や保健体育科の教員だけがかかわればいいとも考えていません。

 そこで重要になるのが、学校教育全体で指導する、「カリキュラム・マネジメント」です。特に健康教育はカリキュラム・マネジメントが不可欠で、学習指導要領の総則にも体育・健康に関する指導は、保健体育の時間はもとより学校教育全体で進めていくということが書かれています。教員研修の際にも、教科だけにとどまらず学校教育全体で進めるようお願いしています。

 保健体育で病気について教え、そのあと道徳で命の大切さについて学ぶといった教科間の連携も大切ですが、カリキュラム・マネジメントはそれだけではなくて、たとえば養護教諭やスクールカウンセラー、栄養教諭などさまざまな職員がかかわることも含まれます。こうした学校内の教育資源はもちろんですけれども、精神科の医師など学校外の医療機関と連携したチーム・ティーチングを行うことも効果的です。

 それに加えて、精神疾患の兆候が見られる子どもに気づいたら声掛けをするなど、配慮が必要な子が出てきたときの受け皿も必要です。

 配慮が必要な子というと、どうしても問題行動を中心に見てしまいがちですが、心の健康という視点で、子どもたちの変化に気づくような共通理解を学校全体で図っていくことが求められると思います。

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