※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 日本の子どもの精神的幸福度は先進国の中でほぼ最下位――。そんなデータが、2020年にユニセフの報告書で発表された。22年度から高校の保健体育の授業で「精神疾患」が教えられることになり、今後の学校教育に期待されることは何か? 文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課の健康教育調査官、横嶋剛氏に聞いた。

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――教育課程の基準とされている「学習指導要領」の改訂が行われ、22年度から高校の保健体育で精神疾患の授業が始まります。「心の健康」に関する授業は、すでに小学校、中学校、高校すべてで行われているそうですね。

 子どもたちの「身体的な健康」の状況は、学校保健統計調査などで、どういう病気の子どもが何人いて、どの病気が増えた、減ったというデータは出てきて、ある程度は把握できますが、「心の健康」は見えにくいんですね。とはいえ、現場の先生はじめ教育にかかわっている人たちは、子どもたちの心の健康がこれまで以上に大きな課題になってきていることは実感していると思います。

 2020年に発表されたユニセフの報告書「レポートカード16」の中に、大変興味深いデータがあります。OECD(経済協力開発機構)の加盟国、または欧州連合(EU)に加盟する国々(41カ国)のほとんどは先進国ですけれども、「子どもの幸福度」のランキングを公表しているんですね。日本は「身体的な健康」は38カ国中1位なのに、「精神的幸福度」は37位、つまりほぼ最下位でした。

 この精神的幸福度は、15歳時点の生活満足度の高い子どもの割合を指標の一つにしています。15歳というと中学3年から高1ぐらい、日本はその学齢の子どもたちの生活満足度が低いんですね。さらに日本は15歳から19歳の若者の自殺率がきわめて高くなっています。

 今回、高校の学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が盛り込まれたため、高校だけが大きく取り上げられがちですが、現代的な健康課題として心の健康は学校教育だけでなく、社会全体で非常に重要視されてきています。今回の学習指導要領の改訂では、小中高すべてで心の健康に関する内容をより重視し、内容の充実を図りました。

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