「積極的に家事に参加したい男性は、“いきなり出しゃばらない”を心掛けてください。シニアの男性は、ある程度社会的な地位もあり、家庭でも威圧的になりやすい。でもこの世代になると妻は自分なりの家事の進め方を確立しているもの。夫のやり方を押し付けられると、カチンときてしまいます」

 夫側も、“家事をしているのに妻に感謝されない”と不満を抱くことになる。

「妻のやり方を尊重することが大事です。そして妻は、自分がどうしても譲れない点を明らかにし、夫に伝えましょう」

 例えば、食器棚の食器の位置が変わっているとイラッとする場合。いきなり「場所が違うでしょ!」では、夫は驚いてしまう。「私は置き場所が変わるのが嫌みたい」と、あらかじめ地雷のありかを伝えておくと、夫も踏まずに済むわけだ。

 では、まったくやる気のない夫は、どうしたらいいだろう。

「もちろん、話し合うのが一番いいのですが、できないという人もいます。その場合は、退職後の生活が話題になったときに、“定年後はこの家事をお願いしようと思う”と、しれっと言うといい。“お願いしたいんだけど、どう?”ではなく、やることを前提に話を進めるのです」

 大切なのは勝負に持ち込まないことだと、三木さんはいう。

「“こういう理由で、あなたは家事をするべきだ”と、相手を論破するような言い方は、反感を買って言い争いになります」

 スキルの伝達という目的を、思い返すことが大切だ。

三木智有(みき・ともあり)
家事シェア研究家。NPO 法人tadaima! 代表。「“ただいま!”と帰りたくなる家庭を増やそう」をテーマに、“家事シェア”の普及に尽力。著書に『家事でモメない部屋づくり』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

(文/松田慶子)

※週刊朝日MOOK『定年後からのお金と暮らし2021』より