選手の能力を見抜く眼力は確かなものがあり、その洞察力と戦術眼は試合中の交代策にもしばしば発揮される。最後の仕上げを強力な外国人選手の個人技に頼ってきた部分は否めず、かつて代表監督就任寸前で梯子を外された「腐ったミカン事件」の過去もあるが、勝てる組織を作り上げる術を持っている名監督であることに疑いの余地はない。今すぐに日本代表チームの指揮を任せても、W杯予選は問題なく突破してくれそうな手腕をこれまで見せてきている。

 欧州での実績、経験、知名度では、スペイン人監督のロティーナが随一だ。1957年6月18日生まれの63歳。エスパニョール、レアル・ソシエダ、デポルティーボ・ラ・コルーニャなどスペイン1部のクラブで長きに渡って手腕を発揮した実力者で、2017年から東京V、C大阪の監督を2年ずつ務め、今季から清水の指揮を執る。守備戦術の構築からのチーム再建はお手の物で、選手の個性を殺すことなく、経験に裏打ちされた采配と的確な交代策を見せる。攻撃面はオーソドックスで派手さはないが、安定感は抜群。人格的にも優れ、バスク人の気質は日本人に合う。日本代表の監督となっても、間違いなく結果を残せるだろう。

 2019年のJリーグを制したポステコグルー監督も非常に優れた指揮官だ。1965年8月27日生まれの55歳。オーストラリア代表監督として2014年のブラジルW杯に参戦(グループリーグ敗退)した後、2018年に横浜FMの監督に就任すると、ハイプレスとサイドアタックを軸に、偽サイドバック戦術を用いながらチーム全員が連動し、縦に速い超攻撃的サッカーを展開した。

 GKも交えながらビルドアップするサッカーは大きなリスクを背負い、実際に失点を重ねた時期はあったが、就任2年目の2019年に快進撃を見せてチームはリーグを制覇。その後、主力選手の流出で優勝争いに加われず、チーム成績は停滞しているが、多くのタレントの中から自分好みの選手を選ぶことができる代表チームならば、再び情熱的で魅力的なサッカーを繰り広げることが可能になるはず。監督としてW杯出場経験も大きなアドバンテージになる。

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大事なのは日本への愛情?