■悪女役の怪演ぶりがSNSでも話題に

 2019年には「累‐かさね‐」(2018年)、「散り椿」(2018年)での好演により、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した芳根。さまざまなオーディションで次々と合格を勝ち取っていくことから、“オーディション荒らし”の異名もあるほど。本人はバラエティ番組で、「(オーディション荒らしの)ニュースが出た次の日に『とと姉ちゃん』のオーディションは一次で落ちました」と意外な事実を明かしスタジオを沸かせていたともあった。

「現在放送中のドラマ『君と世界が終わる日に』の第3話と4話に、女優・中越美亜役として出演していましたが、そこで芳根さんが演じた内容が好評でした。ゾンビがあふれ返る世界で主人公たちに取り入るものの裏切るんですが、実は自身の恋人のためだったというストーリー。たった数話だけの出演でしたが、そのインパクトは絶大でSNSには『ブラック芳根最高だった!』『てのひら返し、素晴らしい演技だった』と彼女の演技力を絶賛するコメントが多数上がっていました」(同)

 芳根に取材した経験のあるドラマウォッチャーの中村裕一氏は、女優としての魅力についてこう語る。

「ドラマ『海月姫』や『チャンネルはそのまま!』といったコメディタッチの作品から、映画『累‐かさね‐』のような人間の心の闇を描いたホラー作品まで、どれも違和感なく作品世界に見事に溶け込んでいる。演技者および表現者として天性の才能があるのでしょう。ご本人はいたって真面目な性格で、毎年『去年の自分を越えたい』という目標を掲げているそうです。そのことからも、仕事に対する真摯な姿勢と努力を惜しまない決意がうかがえます。一方で、高校進学の際には料理の道に進もうと思っていたことや、好きな料理がハンバーグというチャーミングなところも大きな魅力。まだ20代ということもあり、焦らずこのままじっくりキャリアを重ねていけば、事務所の大先輩でもある篠原涼子のように、何歳になっても存在感のある女優になる可能性は十分あります。息の長い活躍に期待したいですね」

 天真爛漫で笑顔がキュートな女性から、闇のある陰のキャラクターまで、とても一筋縄ではいかない役柄を全身全霊で演じてきた芳根。役が憑依しているとも題されるその表現力は、同世代の俳優たちから頭ひとつ抜きんでている感もある。6月25日公開予定の映画「Arcアーク」では、17歳から100歳以上を生き抜く女性という難役にチャレンジ。演技の振り幅が広く、多くの引き出しを持つ彼女が果たしてどう演じているのか、今から楽しみでならない。(高梨歩)

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高梨歩

高梨歩

女性ファッション誌の編集者など経てフリーライターに。芸能やファッション、海外セレブ、育児関連まで、幅広いジャンルを手掛ける。活動歴は約20年。相撲フリークの一面も。

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