■再発予防のために重要な術後の膀胱内注入療法


 
 大阪医科大学病院の東治人医師はこう話す。

「手術方法の選択は、年齢や体力、合併症の有無、本人の希望によって異なります。全摘を回避したいなどの希望があり、選択に迷ったら、セカンドオピニオンを聞いて、納得したうえで治療を受けてほしいです」

 TUR-BTを受けた場合、再発予防のため、手術直後に膀胱内に抗がん剤を注入する「膀胱内注入療法」をおこなう。さらにがんの取り残しがないかどうかを確認するために、「2nd TUR」といって2回目のTUR-BTをおこなうことが推奨されている。

 そのうえでリスク分類をおこない、中リスク~高リスクと分類された場合にはBCGあるいは抗がん剤を膀胱内に注入する「膀胱内維持注入療法」が推奨されている。BCGのほうが治療効果を期待できるが、頻尿、排尿痛、発熱など副作用は出やすい。抗がん剤は全身投与の場合と異なり、副作用は少ない。

 筋層非浸潤性がんは、膀胱内に何度も再発しやすいという特徴がある。このため、定期的に経過を観察して、再び非浸潤がんが見つかれば初回と同様に治療をおこなう。筋層まで進行している場合やBCGを2回投与しても再発する場合、全摘を検討する。

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【医師との会話に役立つキーワード】

《TUR-BT》
筋層非浸潤性がんの場合に受けられる内視鏡治療。からだへの負担が少なく、術後のQOLも維持できるが、手術後は膀胱内に抗がん剤やBCGを注入する治療が必要になる。

《膀胱内注入療法》
膀胱内に薬を注入する方法で、膀胱を温存した場合に重要な治療となる。薬にはBCGと抗がん剤があり、BCGのほうが効果は高いが、副作用が強いため、患者の希望も重視される。

【取材した医師】
小牧市民病院 腎移植センター部長 上平 修医師
大阪医科大学病院 腎泌尿器外科教授 東 治人医師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より