安田氏が沖縄の記者を描こうと思った理由とは?

「それはつまり、いま、日本の新聞記者が『当たり前』を放棄し、輝きを失っているからではないか、と思わずにはいられない。常に何かを忖度し、公平性の呪縛を疑問視することもなく両論併記で仕事をしたつもりになり、志も主張もどこかに置き忘れた新聞記者に、あるいはそこに染まってしまいかねない自分自身にも、どこかで飽き飽きしていた」

 記者に限らない。多くの人が公平性の呪縛にとらわれていやしないだろうか。だれかの主張を反対側の極論と足して中和してバランスを取ろう、などと思っていないだろうか。自分が誰かへの「偏見」に加担していないだろうか。そう省みることができれば……強くそう思う。(東京新聞記者・望月衣塑子

※この記事は、安田浩一著『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』の文庫版解説を改編したものである