とりわけ、積極的に前線に飛び出し、味方のラストパスを引き出す南野のフリーランは、攻撃の貴重なアクセントになっている。戦術を習得しているおかげで、チームメートも日本代表の動き出しをよく見ており、南野の走り込んだスペースにパスが良く出てくる。効果的なパスがなかなかまわってこなかったリバプール時代に比べると、南野もプレーしやすそうだ。

 だが、課題がないわけではない。ひとつは、試合全体を通しての貢献度がまだ足りないこと。ペナルティエリア周辺ではゴールに直結する危険なトライを見せているが、中盤のパスワークから参加し、周囲と連携しながら相手を崩していくプレーはまだ少ない。安全度の高いバックパスを選ぶのではなく、寄せてきたマークを一人剥がし、局面を打開するようなプレーも増やしたい。そのためには、敵にガツンと寄せられても当たり負けしないフィジカルの強さも必要になるだろう。

 いずれにせよ、こうした課題を克服できれば、リバプールでの活躍にもつながってくる。ユルゲン・クロップ監督は、ザルツブルクにいた南野と交渉する際、君のキャリアの全盛期を一緒に戦おうと誘ったという。日本代表FWは、ドイツ人指揮官の申し出に首を縦に振った。厳しい競争は覚悟の上だ。

 もう1年、プレースタイルの合っているサウサンプトンにレンタルで在籍するオプションもあるだろうが、現在、南野は26歳。来年には27歳になるため、選手としてピークを迎える来シーズンは、リバプールで再び定位置奪取に挑戦する可能性が高いと見る。むしろ、ここでトライしなければ、リバプールに移籍した意味が薄れてくる。

 もちろん、今後の去就は現時点で誰にもハッキリとは分からない。今できることは、1試合でも多く出場し、選手として成長する。そして、当たりの激しいプレミアリーグのプレースタイルに適応する。

 武者修行先のサウサンプトンで切磋琢磨すれば、南野はさらに進化するはずだ。(文・田嶋コウスケ・英国ロンドン在住ライター)