「女子美術大学付属は20年春の緊急事態宣言後の学校再開時に、登校した生徒の授業をすべて美術にしました。鬱々としたコロナ禍のなか、絵が好きな生徒のためにせめて学校を楽しい場所にしたいとの配慮だった。そういう生徒に寄り添う姿勢が、受験生に伝わったのではないでしょうか」(安田さん)

■新駅効果? 志願者アップの学校は

 今年は男子校、女子校ともに、最難関校が軒並み志願者を減らしたなかで、男子校では駒場東邦(世田谷区)だけが605人から645人に増加した。

「ICT教育などがしっかりしており、保護者からの支持も高い。コロナ禍でも少人数の学校説明会を開き、受験生や保護者が実際に学校を訪れました。それが志願者の数につながったのでしょう」(SAPIX教育情報センター本部長・広野雅明さん)

 その分、準難関校が伸長した。49年ぶりに山手線に新設された「高輪ゲートウェイ駅」の効果で、高輪(港区)が1773人から1958人に増加。神奈川でもサレジオ学院(横浜市)は809人から944人と増やした。

 一方、隔年現象が見られた学校もある。世田谷学園(世田谷区)は昨年、前年から700人以上増やして2241人を集めたが、今年は1629人に減少。巣鴨(豊島区)は一昨年の1461人から昨年は2418人に大幅に増加したが、今年はその反動からか2066人に減少した。 

 女子校では鴎友学園女子(世田谷区)の健闘が目立った。1118人から1327人と120%近く伸長。北さんは「園芸という特徴的な授業もあり、5教科以外の授業も重視している。そういう教育方針が、受験生や保護者から支持されたのでは」と話す。

 跡見学園(文京区)、山脇学園(港区)、実践女子学園(渋谷区)など、伝統校回帰の傾向も見られた。

「なかなか説明会が開かれず情報が少ないなかで、伝統校なら安心してわが子を預けられると考えた保護者が多かったと見られます」(安田さん)

(文/柿崎明子)

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柿崎明子
ライター 柿崎明子

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