そう考えると、この「12年」という周期は何のために示されているのだろう。国交省のガイドラインにはその理由が示されていない。
それは多分に「大事を取って」ということではないかと推測する。
多くの大規模修繕工事は、この「大事を取って」行う外壁補修と一緒に、他の劣化部分も併せて補修してしまおう、という発想で行われている。その結果、費用は莫大な額に膨れ上がってしまう。
多くのマンションの管理組合では、築10年を過ぎたころに管理会社から大規模修繕工事の準備をするように促される。組合内に委員会を立ち上げて、修繕工事内容を話し合うのだ。
管理組合がおっとりとしていると、議論は管理会社がイニシアチブを取って進められる。
「この際ですから○○の補修も行いましょう」
管理会社はアレコレと工事内容を盛りたがる。
やがて工事の内容が決まると、施工会社の選定に入る。ここでカタチばかりの相見積もりとなって、最終的には管理会社が受注してしまうケースが多い。ただ、ほとんどの管理会社は施工部門を持たない。すべて外注になる。
大規模修繕工事の費用の目安は、1住戸当たりおおよそ100万円だ。300戸のマンションなら約3億円となる。タワマンなら、この2倍。6億円にもなってしまう。
管理会社が受注した場合、その利益率はおよそ3~4割だといわれる。かなりおいしい商売だ。だからこそ、管理会社は大規模修繕工事の実施をせっせと勧めるのだ。
このように管理会社が勧めるままに大規模修繕工事を行うと、割高になるケースがほとんどだ。そもそも「大規模修繕」というイベント的な補修工事を行わなくても、立派に管理されているマンションはある。
例えば、都心エリアに立地する600戸規模のあるタワーマンションは築15年以上になるが、いまだに大規模修繕工事を行う計画がない。ではそのマンションの建築的な劣化が進んでいるかというと、まったくそんな様子はない。むしろその逆だ。