週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「首・腰の手術」の解説を紹介する。

【図解】首・腰の手術の治療選択の流れはこちら

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 首と腰は痛みのほか、しびれなどの神経症状を起こすと、病気の進行が疑われる。首の病気は、首の骨の後ろ側にある脊柱管を通っている神経の脊髄がダメージを受ける「脊髄症」と、脊髄から首や肩、腕へと枝分かれしている神経根がダメージを受ける「神経根症」の二つに大きく分けられる。主に脊髄症の原因に、頸椎症、後縦靱帯骨化症、頸椎椎間板ヘルニアがあり、神経根症の原因に、頸椎症、頸椎椎間板ヘルニアがある。

 腰では脊柱管狭窄症、変性すべり症、成人脊柱変形、腰椎椎間板ヘルニアなどがある。いずれも、加齢が原因である。

 治療は、基本的に保存療法からスタートする。薬物、コルセットで固定する装具などを3カ月以上試し、改善しない場合に検討されるのが手術だ。手術については、後半で解説している。

 近年では、首と腰の手術を安全におこなうためのシステム「脊髄モニタリング」が広まりつつあり、日本でも普及してきている。

 首と腰の手術は全身麻酔でおこなうため、術中に神経組織に障害が出ているか本人に直接確認できない。「脊髄モニタリング」では術中に頭から弱い電気刺激を送り、手足の筋肉の動きを確認。神経の障害が出た場合、筋肉の動きが小さくなるので、術者はリアルタイムで情報を受けとることが可能になった。

 また、首に人工椎間板を入れる手術も始まっている。ただし、技術的に難しく、実施している施設は限られている。

 チャートでは、腰部脊柱管狭窄症の患者の一例を示した。患者がもっとも悩むのは手術を受けるか否かだろう。長崎労災病院の小西宏昭医師は「症状が進行しているかどうかが重要です。薬物療法で症状をコントロールできずに進行している場合や日常生活に支障がある場合は手術の検討を」と話す。

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